2024/8/3(土)14:00−15:30に明石市民図書館にて図書館との共同開催イベントとして、第2回ヒューマンサイエンスカフェ「地球温暖化によるサンゴ礁の衰退」を開催しました。
一般13名と職員2名の出席がありましたが、最も期待していた大学入学前の中高生の参加はありませんでした。予約方法が電話と窓口受付しかなかったことも理由にあり、メールやQRコード、SNS配信などが必要との指摘もありました。
地球温暖化が背景にあるサンゴの危機の話でしたので、最初に「サンゴと温暖化のどちらにより興味があるか?」アンケート質問をしたところ、半々くらいの割合でした。いずれの参加者も終始とても真剣に聞いており、講演後には温暖化に関する質問をはじめ、質疑応答が活発に行われました。
【要旨】
温暖化の確実な進行に伴って、この26年間で4回の世界同時発生の白化現象(GCBE)が起きており、世界のサンゴ礁は極めて急速に衰退しています。白化現象とは、高水温などによりサンゴに共生する藻に異常が発生し、サンゴの骨格の白色が目立つ現象で、海域全体のサンゴが一度に死に至ることもある恐ろしい現象です。日本の南西諸島も例外ではなく、今夏も大規模な白化現象が報告されています。
サンゴ礁の回復のためには、サンゴの産卵とその定着を活用することが効果的です。しかし、せっかくサンゴ卵が定着しても、ひとたび白化現象が起きれば一撃で全滅してしまう恐れがあります。つまり、留まる気配を見せない温暖化による世界的な水温上昇のため、サンゴは同じ海域に留まっていても死を待つばかりで、そう遠くない未来に世界中からサンゴがいなくなるかもしれません。特に、海洋生物の25%はサンゴ礁に生息しているため、これはサンゴ礁だけの問題ではなく、世界の海全体の生態系への影響が危惧されています。極端な話、光合成が十分可能な世界の浅海域のサンゴ礁の消滅は、地球史上6回目の大量絶滅につながるかも知れません。
この温暖化時代におけるサンゴの温暖化適応・生存戦略として、サンゴ生息域が極方向に移動することは自然かつ妥当であるため、その自然の力を我々が支援するのが得策と考えました。特に現在起きているのは浅海域のサンゴの減少と温暖化適応のスピード競争なわけですから、ちょっとした支援が違いを生むかも知れません。そこで、南西諸島の黒潮上流域において、観測と数値シミュレーションから、極方向に移動しやすいサンゴ卵の供給源海域を特定しました。この海域において天敵のオニヒトデ駆除や排水・赤土流出防止などの保全活動を優先的に行うことは、より多くのサンゴ卵が極方向に引っ越して生き延びることになり、黒潮域全体で考えたときのサンゴの存続につながります。更に、これは世界の亜熱帯循環の西岸境界流域で同様に適用できる方策のため、黒潮域だけでなく世界中のサンゴの存続につながることが期待されます。