2017年度第1回大蔵谷ヒューマンサイエンスカフェを開催しました。6/14

 2017年6月14日(水)の18時から、第1回大蔵谷ヒューマンサイエンスカフェを開催しました。11名の参加者がありました。今回は、人文学部で英語学・言語学を専門としている出水孝典が、「男女の話し方の違いはなぜ生じるのか」というテーマで話をしました。

大蔵谷ヒューマンサイエンス17年度第1回

 初めに、女性らしい話し方、つまり女ことばには、発話の口調を弱めるものと強めるものがあることを概観した後で、そのような話し方が生じる理由として、ロビン・レイコフの支配説と、デボラ・タネンの相違説という2つの説があることを紹介しました。支配説によると、女性が弱めた言い方をするのは男性に支配され、自信を持てず不安だからであり、強めた言い方をするのは男性優位の社会で、強めた言い方をしないときちんと話を聞いてもらえないためだとされます。一方、相違説によると、女性が弱めた言い方をするのは相手との親密な関係が壊れないように押しつけがましくない言い方をするためであり、強めた言い方をするのは、相手に自分の感情を伝え、共感を持ってもらい、より親密な関係になるためだとされます。

大蔵谷ヒューマンサイエンス17年度第1回

 このように同じ現象に対して複数の見方ができることこそが、学問の醍醐味であることをお伝えした上で、相違説についてさらにお話ししました。これによると、女性が会話する主目的は、類似点や共通体験を示すことで、親密な関係・人脈を確立することです。一方、男性が会話する主目的は知識・技能を誇示したり、情報を伝えたりすることで自分の地位を維持することです。後半では、実際に男女の掛け合いになっているJ-popの歌詞を取り上げ、男性のパートと女性のパートが、それぞれの性別による会話目的の違いを如実に反映していることを具体的に示しました。

大蔵谷ヒューマンサイエンス17年度第1回

 具体的な内容の話であったので、ご参加のみなさんからも熱心な質問がありました。ありふれたことばの使い方であっても、そこからさまざまな興味深いことを読み解けることを、J-popの歌詞という具体的データに理論を援用することで提示することができる良い機会となったと思います。
 
                                         (文責 出水孝典)

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