2018年度第2回大蔵谷ヒューマンサイエンスカフェを開催しました。6/13

 2018年6月13日(水)の18時から、第2回大蔵谷ヒューマンサイエンスカフェを開催し、14名の参加者がありました。今回は「基本イメージから考える英語の前置詞・副詞ー空間を表す語を中心にー」というテーマで、前置詞・副詞の on と about を用いた表現を中心に本学人文学部の熊田俊二が話をしました。

大蔵谷ヒューマンサイエンスカフェ18年度第2回

 on や up、down のような空間における「もの」と「もの」との位置関係を表す前置詞・副詞は、それぞれの語がいくつもの異なった意味を持っていることから「多義語」と呼ばれています。たとえば『ジーニアス英和辞典』で on を引くと、前置詞で18、副詞で6、形容詞で4、名詞が1の合計29の語義があげられています。私たちはこのような多義語をどのように学習していけばよいのでしょう。それぞれの語に対して辞書にあげられているような多くの意味、さらにイディオムまで1つ1つ理屈抜きに暗記するしかないと考えている人も多いのではないでしょうか。

大蔵谷ヒューマンサイエンスカフェ18年度第2回

 ところが、英語を母語とする人たちが前置詞や put on、take off などのイディオムをどのよう認知し、処理しているかを調べてみると、私たちがするようなまる暗記とは違うように思われます。今回はそれぞれの語の一番基本的な意味を考えてそこから様々な意味をつなげていくことで、母語の日本語を使うのと同じような感覚、すなわちフィーリングで操ることができないかを探ってみようと思いました。以下で当日考えた例の一部を紹介します。

大蔵谷ヒューマンサイエンスカフェ18年度第2回

 on の一番基本的な意味は「~の上に」だと考えている人が多いのですが、実は「接触」が一番重要な意味で、そこから on
の多くの意味がつながってくるということを最初に確認しました。A is on B では、A が B の上にあってもお互いが接触していなければこの表現は使えません。on の反対は off(分離)になります。
 on、off と言えば電気の「オン」「オフ」が頭に浮かびます。英語で turn on the light、turn off the light という表現を使いますが、「スイッチのつまみを turn して on にする」と電流が通って電気がつくし、「 turn して off にする」と電気が消えてしまいます。

 
 switch on/off the light、put on/off the light も同じ意味で使用します。switch は動詞として用いられて「スイッチを操作する」という意味です。それぞれ「スイッチを回して on/off の状態にする」「 light を on/off の状態に置く」と考えることができます。
 on には a book on animals のように「~に就いて」という意味があります。この場合も book と animals(本とそのテーマ)とは非常に強いつながりがあり、離れたものではないので「接触」という概念を用いた表現になります。日本語の「つく」も漢字であらわすと「就く」「付く」「即く」などがありますが、いずれも語源は「くっつく」のようです。

大蔵谷ヒューマンサイエンスカフェ18年度第2回

 about にも「~について」という意味があります。about は「~の周りに」「~の周辺で」が基本的な意味なので、onほどのぴったり感はありませんが繋がりはありそうです。about 30は「30のまわり」ということで28、29や31,32あたりが該当します。be about to(do)というイディオムを高校で習った人も多いと思います。これも「何かをすること(to do)の(時間的に)周辺、近くにある」から「まさに~しようとしている」という意味になります。このようなイディオムはまる暗記していれば忘れたらそれでおしまいですが、基本的な意味をもとに感覚をつかめば語感というものを少し感じられるのではないでしょうか。

大蔵谷ヒューマンサイエンスカフェ18年度第2回

 私たちは日本語でも空間の概念をたくさん使って表現しています。たとえば「仕事の前に」「仕事の後で」の「前と後」、「上機嫌」「気持ちが沈む」の「上と下」、「時間内に終える」「時間外診療」の「内と外」などです。日本語について考えてみても面白いと思います。
                                          (文責 熊田俊二)

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