地域研究センターの「シンポジウム 明石で考える 明石から考える ―明石で始める風土と暮らしの人文学―」が開催されました。

 地域研究センター主催の「大蔵谷ヒューマンサイエンスフェ2022」が8月7日、明石市の複合型交流拠点ウィズあかしで開催されました。今回は「シンポジウム 明石で考える 明石から考える ―明石で始める風土と暮らしの人文学―」と題し、基調講演とシンポジウムが行われました。

シンポジウムの様子

 中村健史准教授(人文学部)の講演「明石の魚と百人一首 ―藤江でマグロが釣れた?!―」では、古代の明石地域で「海人(あま)」と呼ばれる漁民たちが活躍していたことを指摘し、『万葉集』に見られるスズキやマグロを釣る記述が紹介されました。また講演の最後には、海人をめぐるロマンチックな空想から生まれた藤原定家の「来ぬ人を松帆の浦の夕凪に焼くや藻塩の身もこがれつつ」は、現在の明石市西部の海岸付近かと推測される名寸隅(なきすみ)から来る男を待つ歌だという解釈も披露されました。

基調講演を行う中村准教授

 用田政晴教授(人文学部)の講演「旧明石郡の前方後円墳の保存と活用 ―三者三様の五色塚古墳・白水瓢塚古墳・王塚古墳―」では、旧明石郡内に白水瓢塚古墳(神戸市西区)、五色塚古墳(神戸市垂水区)、吉田王塚古墳(神戸市西区)という前方後円墳が存在し、それぞれ異なった特色があることが詳しく紹介されました。3基のそれぞれ特色ある前方後円墳が集中することは、畿内政権にとって旧明石郡が東アジア世界に対する「関門」と位置づけられていた可能性を示唆するとのことです。

基調講演を行う用田教授

 以上の基調講演を受け、三田牧准教授(人文学部)の司会によってシンポジウム「人の暮らしと人文学 ―明石から「人間」を考える―」が行われました。講演を聴かれた地域の皆さんからの質問に講演者が回答したほか、矢嶋巌教授(同学部)もパネリストとして加わり、古代や現代の社会における海と人との関わり、漁民の暮らし、明石における海の位置づけや淡路島との関係などが活発に議論されました。シンポジウムの中で地域の埋もれた記憶を掘り起こすような指摘や意見もあり、活発で有意義な議論を深めることができました。

シンポジウムを進行した三田准教授
シンポジウムでコメントする矢嶋教授

 なお、当初このシンポジウムでは鈴木遥講師による基調講演「移住と家族からみる地域 ―インドネシア沿岸の事例より―」が予定されていましたが、都合により割愛いたしました。

 またこのシンポジウムは神戸学院大学人文学部研究推進費、JSPS科研費19K12491による研究成果を含みます。

(文責 中村健史)

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