明石ハウス「くずし字解読講座」について

 神戸学院大学地域研究センターでは、2011年度以降、明石ハウスで様々な活動を行ってきました。その一つが、2013年度に当時の博士研究員・吉田佳世氏か開催した講座「ものかき塾」です。地域の方々とともに「自分史」の執筆に取り組むという内容でした。
 その後、明石ハウスの管理運営は、2018年10月より筆者(中村真理)が担当することとなりました。それに際し、過去の「ものかき塾」に倣い企画したのが、「くずし字解読講座」です。

 講座は2019年6月にスタートしました。毎週火曜日の午前10時から12時まで、お盆休みや年末年始などの休講を挟みながら、2020年2月18日までの8ヶ月間にわたり開催しました。ご参加いただいた方は、当初は4名ほどでしたが、次第に増えて多い時は10名にものぼり、テキストを広げる机上スペースの確保にも苦慮するほどでした。
 教材として用いたのは、文化元年(1804)に大阪で出版された地誌『播州名所巡覧図絵』の「明石郡」の部分です。講座の席上では、単に「くずし字を解読する」だけではなく、『播州名所巡覧図絵』の内容に即した様々な議論が展開されました。講座参加者には、この地域に長年住まわれた方も多く、土地勘はもちろん、地域の歴史にも深い関心をお持ちでした。単なる歴史的・地理的な知識のみならず、江戸時代と現代をつなぐような記憶もお話いただいたことで、大変有意義な時間になりました。
 そのような場が新型コロナウイルスに奪われてしまったことが、ただ残念でなりません。再開の機会を待ちつつも、2021年1月、この講座の成果として、影印に翻刻・注釈・現代語訳を付し、講座参加者の方からいただいた寄稿をあわせて掲載した報告書を刊行しました。

 2022年3月現在、新型コロナウイルスの流行拡大は、収まる様子にありません。様々なものがオンライン化される中、明石ハウスでは、Youtubeを使って「オンラインくずし字解読講座」を配信する試みを始めました。江戸時代初期に刊行された『源氏物語』の注釈書『湖月抄』の「明石」の巻を教材に、くずし字の初歩から解説をしていく予定です。

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