オンラインくずし字解読講座⑥

 神戸学院大学地域研究センター明石ハウスでは、Youtube「明石ハウスチャンネル」にて「オンラインくずし字解読講座」を配信しています。第6回は、踊り字(くりかえし記号)を取り上げます。

踊り字

 現在の日本語の表記には、同じ漢字の繰り返しを指示する記号「々」があります。ひらがなの場合は記号は使わず、例えば「つつみ」「こころ」のように、同じ字を2字重ねて書きます。
 一歩の江戸時代以前には、ひらがな・カタカナにも繰り返し記号が存在していました。「ゝ」で1字の繰り返しを指示します。この「ゝ」は、例えば「ら」の点などと紛らわしいので、注意が必要です。
 また「ときどき」「ところどころ」など、複数の文字の繰り返しを示す記号も存在していました。ひらがなの「く」を長く引き延ばした形をしているので、「く」と区別しなければなりません。今回の動画では、この区別についても扱っています。

史実と物語

 「明石」の冒頭で光源氏は、「京都に帰りたいけれども、帰ったら笑われ者になる」と悩んでいます。ここには、『源氏物語』が書かれる数年前の事件である「長徳の変」が影響を与えているようです。「長徳の変」とは、紫式部が仕えた中宮・彰子の父である藤原道長と、その甥で、清少納言が仕えた皇后・定子の兄である藤原伊周との権力争いの末に、伊周が敗れて左遷されたという事件です。
 伊周は「太宰権帥」という職に任命されました。かつての菅原道真のように、本来なら任地である太宰府へ行かなければならないところを、都から近い播磨に逗留しても良いことになります。しかし、病気の母を見舞うために、ひそかに京都に戻っていたことが発覚した伊周は、本当に太宰府へと赴くことになってしまいました。この現実の事件が、フィクションである『源氏物語』の表現に影響を与えたと考えられています。
 なお、伊周が左遷先の明石で菅原道真のことを聞き、我が身を嘆く歌を詠んだ時の様子が、『栄花物語』に書かれています。『栄花物語』は『源氏物語』のおよそ一世紀ほど後に書かれた作品です。こちらの伊周の描写には、『源氏物語』が影響を与えていると言われています。

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