オンラインくずし字講座⑦

 神戸学院大学地域研究センター明石ハウスでは、Youtube「明石ハウスチャンネル」にて「オンラインくずし字解読講座」を配信しています。第7回は、紛らわしい字の判別を取り上げます。

文脈判断

 中学・高校の古典文法では、しばしば「文脈判断」という言葉が使われますが、くずし字の判読でも「文脈判断」に頼らざるを得ない場面があります。「く」と「し」、「い」と「つ」と「は(ハ)」と「へ」には、形の特徴だけで見分けることが困難な形で書かれることがしばしばあります。
 このような場合は、1つずつ可能性を考えつつ、前後の言葉や内容との整合性を考えながら判断しなければなりません。

光源氏の「夢」

 平安時代の人々が、重要な意味を持つものとして「夢」をとらえていたことは、『百人一首』にまつわるエピソードなどからも、広く知られているかと思います。そして、「明石」の冒頭で、光源氏は繰り返し同じ夢を見ては、その示唆するところに悩まされています。
 それは、得体の知れない存在が、自分にまとわりつくという夢でした。この夢の所以は、1つ前の巻である「須磨」の最後の場面に書かれています。現在は「ひな祭り」の日である3月3日には、当時は「上巳の節句」として、水辺で身を清めるという行事が行われていました。須磨滞在中の光源氏は、海辺で禊ぎを行います。そこで、自分の身の上を哀れむ歌を詠んだところ、突如として大嵐がやってきます。人々はこれを、神仏のしわざと考えました。
 その日の朝方、光源氏は、得体の知れない存在が「なぜ、”宮”が召しているのに来ないのか」と言ってまとわりついてくる夢を見ます。光源氏はこれを、海の底の龍王に自分が目を付けられてしまったと考え、恐怖を感じます。夢を神仏の「お告げ」だと信じていた当時の人々の感覚としては、甚だ恐ろしいものだったのでしょう。
 実は、この光源氏の推測は、全くの外れではないのですが…。この「夢」の話が、光源氏の「明石」の話へ続く伏線となっていきます。

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