地域研究センターでは、2019年度に「明石における「地域の自画像」研究―通史的変遷をたどる―」が日本学術振興会の科学研究費基盤研究(C)に採択され、明石を舞台として、「地域の自己イメージ」を通史的に考察することを目指した研究に取り組んでいます。この研究において、明石市のさまざまな歴史的資料の解析を依頼している西川哲矢氏(近世史・法制史)と人文学部の中村健史准教授が、明石の地誌として知られる『采邑私記』を、東京国立博物館本によって翻刻して訓読を加えた、『采邑私記―翻刻と訓読―』を刊行しました。同書の凡例における記載によれば、『采邑私記』は元禄の末(1700年代初頭)に太田小左衛門が撰した地誌書で、明石郡と明石藩領の美囊郡が収録されています。神戸学院大学有瀬キャンパスの敷地はかつての漆山村と大蔵谷村にまたがっており、漆山村が寛文戌申の年(1688(寛文8)年)に開かれたこと、地域研究センターの協同研究でも関わりが深い稲爪神社が大蔵谷村の鎮祠であることや八幡神社に松林があったことが訓読で記されているなど、明石の歴史好きにとっても欠かせない史料といえます。なお、本書は神戸学院大学有瀬図書館にも所蔵されています。
西川哲矢・中村健史
書名『采邑私記―翻刻と訓読―』
発行所 デザインエッグ
発行年月日 2022年3月(158ページ)
ISBN 978-4815032135